自己破産するべき?借金額のボーダーラインをケース別に解説

自己破産は、借金をゼロにするという強力な効果があるため、むやみやたらと自己破産を認めてしまうと社会経済が破綻してしまう危険性があります。では、借金がいくらであれば自己破産は認められるのでしょうか。今回は、自己破産が認められるかどうかのボーダーラインをケースに分けて解説します。

自己破産が認められる要件は「支払不能」状態にあること

自己破産の申立てをしただけでは借金はゼロにはなりません。申立てをした本人が「支払い不能の状態にある」と裁判所が認めて、初めて破産手続きが開始するのです。つまり支払不能状態にない限り、自己破産の手続きはすすまないことになります。

では支払不能状態とはどのような状態のことをいうのでしょうか。法律上の定義では、支払い不能とは、「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」をいうとされています(破産法2条11号)。

つまり、支払不能状態とされるには

  1. 支払い能力を欠いていること
  2. 支払いできない状態が継続していること

という2つの要件を満たす必要があります。

(1)支払い能力を欠いていること

支払い能力を欠いていることとは、申立てをした本人にこれといった財産がなく、信用や労力・技術によっても金銭を調達することができないことをいいます。申立人に財産がなくても、信用や労力によってお金を調達することができれば、支払い能力があると判断されます。

逆に、財産があっても、売却できない財産であったら、お金に換えて債権者に支払いをすることはできませんので、この場合は支払い能力を欠いていることになります。

(2)支払いできない状態が継続していること

突発的な出費で、一時的に手元にお金がなく支払いができないといった状態では支払い不能とはいえません。失業や長期的な病気で職に就くことが難しい場合や大幅な給料カットで、回復の見込みがないなど将来的に継続して支払いができない状態にあることをいいます。

(3)支払停止

支払不能とよく似た言葉に支払停止があります。支払停止とは、支払い不能であることを自ら表示する行為のことをいい、支払停止があれば、支払不能であることが推定されます。具体的には、支払いができないことの通知や弁護士・司法書士からの受任通知(介入通知)、夜逃げや廃業などが、支払停止の典型的な行為とされています。

(4)支払い不能の基準

支払不能かどうかを図る明確な基準はなく、財産や信用、労力や技術、年齢、性別などを総合的に考慮して支払不能かどうかは判断されることになります。たとえば、不動産をたくさん持っている人であっても、それをはるかに上回る借金をしていれば、支払不能といえますし、財産はなくても収入があり、借金もそれほど多くなければ支払不能とはいえません。

他の債務整理との関係

自己破産はあくまでも最終手段となるため、他の債務整理で生活再建が望める場合は、他の債務整理を検討することになります。

(1)自己破産以外の主な借金整理方法

法律によって認められている借金の整理方法のこと「債務整理」といいます。債務整理には、債権者との話し合いによる「任意整理」、裁判所を利用した「自己破産」「個人再生」、裁判所が仲介役となる「特定調停」という4つの方法があります。

このうち借金の支払い義務を免除してくれるのは、自己破産だけです。他の方法では、借金の支払い義務自体は免除してくれませんが、借金を減額してくれます。そのため、自己破産では「支払不能状態にあること」が条件とされ、逆に他の方法では、ある程度の返済能力が必要とされます。

(2)任意整理のボーダーライン

任意整理では、将来かかってくる利息をカットし、元金のみを返済していくことになります。任意整理では、無理なく返済できる期間として一般的に3年で借金全ての返済ができるように返済期間を設定します。そのため、3年で借金が完済できない場合は、自己破産や個人再生の手続きを検討していくことになります。

具体的には「借金の総額」を「毎月の返済可能額」で割った数字が36回を超えている場合は、自己破産や個人再生、超えない場合は任意整理を選択することになります。

借金の総額 ÷ 毎月の返済可能額 > 36 自己破産・個人再生
借金の総額 ÷ 毎月の返済可能額 ≦ 36 任意整理

毎月の返済可能額は、手取り収入から家賃や食費、光熱水費、携帯電話代、教育費、医療費、交通費、日用品購入費、交際費やお小遣いなどを差し引き、さらに緊急時のために2万程度除いた金額です。

例えば、手取り収入が20万円、家賃が6万円、食費が4万円、水光熱費が1万円、携帯電話代が5,000円、日用品購入費が1万円、交際費が1万円の場合、緊急時のための2万円を差し引いて、4万5千円が返済可能額となります。借金の総額が100万円の場合、100万円÷4万5千円≒23回、任意整理で借金を整理することができます。

では借金の総額が300万円の場合はどうでしょうか。300万円÷4万5千円≒67回となり任意整理では借金を整理することは難しいので自己破産や個人再生という手続きを検討することになります。

このケースで判断が難しいのは、借金の総額が200万円前後の場合です。200万円÷4万5千円≒45回の返済が必要となるので、任意整理では厳しいかもしれません。ただ、家族には絶対に知られたくない、自己破産では制限される職業に就いている、マイホームなどの財産を処分したくないといった事情がある場合は任意整理で借金を整理するのが無難といえそうです。

債権者の多くは、返済期間を5年程度までなら伸長してくれます。なかには債務者の年齢や事情を考慮して、10年程度の長期分割に応じてくれる債権者もいます。しかし、任意整理にこだわるあまり、無理な返済計画をたてることは禁物です。

任意整理が返済期間3年を基準としているのは、債務者の返済能力は3年を超えるといろいろな事情で変更される可能性が大きいことに基づきます。たとえば、結婚や離婚、出産や子どもが増えたり、また子どもの受験や進学、親の介護や、給料の減額、勤務先の倒産やリストラ、自身の病気やケガなど様々な出来事が起こりうる可能性があります。

こうした出来事の一つでも起こると、支出が増加し、家計の収支バランスが崩れてしまう危険性があります。そうなると債権者へ返済したくても返済できるお金を確保するのが難しくなり、せっかくの借金整理も頓挫してしまうことになります。そうした事情を考慮し、任意整理では3年以内に返済が終わることを原則としているのです。そのため、返済期間が3年を超える場合は、任意整理で進めるか、他の方法を検討するかを慎重に判断していく必要があります。

(3)個人再生のボーダーライン

個人再生では借金の額が最大5分の1に減額されます。個人再生でも、任意整理と同様、減額された金額を原則3年で返済することになります。

例えば、先ほどの例で考えてみましょう。手取り収入が20万円、生活費などを差し引いた毎月の返済可能額が4万5千円で、借金の総額が300万円あったとします。個人再生では、小規模個人再生の場合、最低弁済基準と保有している財産の評価額の総額(清算価値)のいずれか高い方が弁済額となります。

最低弁済基準

借金の総額 弁済額
100万円未満 その額
100万円以上500万円未満 100万
500万円以上1,500万円未満 1/5
1,500万円以上3,000万円未満 300万
3,000万円以上5,000万円未満 1/10

借金の総額が300万円でこれといった財産もない場合、個人再生を利用すれば、100万円を3年で返済していくことになります。毎月の返済額は100万円÷36回≒2万8千円となり、返済可能額4万5千円の6割程度の返済額ですみます。個人再生を利用すれば、任意整理では返済が難しい方でも、無理なく返済をしていくことができるようになります。

では借金の総額が800万円であった場合はどうでしょうか。保有財産がなければ、返済総額は160万円になります。毎月の返済額は160万円÷36回≒4万5千円となります。この金額は、先の例の返済可能額と同額となりますので800万円の借金があっても、なんとか個人再生で手続きを進めることができそうです。

一方借金が1,000万円となると、返済総額は200万円で、毎月の返済額は200万円÷36≒5万6千円となり、返済可能額を1万円以上上回ってしまうことになります。個人再生でも特段の事情があれば、返済期間を5年まで伸長してくれることがありますが、返済期間が3年を超える返済能力に変更が生じる可能性があるため、期間伸長については慎重に判断すべきです。

そのため、

借金の総額  ÷  毎月の返済可能額  ≦ 36回

であれば任意整理を、36回を上回る場合は、個人再生により減額された借金の総額 ÷ 36回 ≦ 毎月の返済可能額であれば個人再生を検討し、36回で返済しきれない場合は、自己破産を検討していくことになります。

自己破産は借金額が多いか少ないかではない

自己破産が認められるかどうかは、借金の額が問題となるわけではありません。例えば、他に財産や貯蓄はなく、毎月の年金10万円で生活している人が100万円の借金を抱えていた場合を考えてみましょう。

毎月の生活費などを差し引くと、5,000円しか返済に充てるお金が手元に残らない場合、100万円÷5,000円 =200回と、任意整理で返済していくことはほぼ不可能ですし、かといって個人再生を利用したところで、100万円の借金だと減額されないので個人再生で手続きを進める意味がありません。そうすると、支払不能と判断され、自己破産が認められる可能性が高くなります。

逆に、借金が1,000万円であっても収入が十分にあれば、任意整理で返済していくこともできますし、十分な収入はなくても高額な財産があれば、それを売却して借金の返済に充てることができれば、支払不能とは判断されないことになります。このように自己破産が認められるかどうかは借金の多寡ではなく、財産や収入状況、年齢や勤務状況など総合的に考慮して判断されます。

以前、日本弁護士連合会が行った調査でも、自己破産の申立てを行った人のうち負債額100万円未満の人が9.73%、100万~200万円未満の人が20.42%という結果がでています。借金の額が少ないからといって自己破産が絶対にできないということはありませんので、一度、弁護士に相談してみるようにしてください。

まとめ

自己破産が認められるかどうかは借金の額ではなく、申立てをする人の返済能力の有無が問題となります。借金の額が多くても返済能力があれば、自己破産ではなく他の手続きを検討することになりますし、逆に借金の額が少なくても返済能力がなければ、自己破産を検討することになります。借金が少額であっても、支払い不能状態に陥っていれば自己破産は十分に認められますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

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