自己破産の手続きの流れや方法を徹底解説

「自己破産をしたいけど、何から始めたらいいのかわからない」「自己破産をするのは難しそう」と悩まれている方も多いかと思います。自己破産は借金の整理方法の中で唯一、借金をゼロにするという大きな効果があるため、その手続きは裁判所を利用した厳格なものになります。また、財産のある・なしによって、手続きの流れが大きく変わってきます。

今回は、自己破産の手続きの流れや方法について詳しく解説します。

自己破産は裁判所を利用した手続き

自己破産は、簡単に言うと裁判所に自己破産を申立てて、裁判所から借金の返済を免除する「免責」決定を受けることで、借金をゼロにする手続きです。大まかな手続きの流れは下図のようになります。

(1)必要書類の収集

自己破産の申立てに必要となる書類としては、下記のものがあります。

  1. 自己破産申立書(裁判所のホームページがダウンロードできます)
  2. 陳述書(裁判所のホームページからダウンロードできます。陳述書では自己破産に至った経緯を記述する必要があることから、借金をした事実だけでなく、借金をした理由などを時系列に沿って詳細に記述していく必要があります。)
  3. 債権者一覧表(裁判所のホームページからダウンロードできます)
  4. 資産目録(裁判所のホームページからダウンロードできます)
  5. 2か月分の家計簿(裁判所のホームページからダウンロードできます)
  6. 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)3か月以内のもの
  7. 住民票 世帯全員の記載のあるもので、3か月以内のもの
  8. 居住地がわかる書類(持ち家であれば不動産登記簿、賃貸であれば賃貸借契約書など)
  9. 預貯金通帳のコピー(申立前1年分、表紙、表紙裏) 申立て前2週間以内に記帳すること
  10. 所得証明書(源泉徴収票等) 直近2年分
  11. 退職金(見込額)証明書
  12. 保険証書と解約返戻金の証明書(保険に加入している場合)など

(2)自己破産の申立

住所地を管轄する地方裁判所に申立てを行います。申立てに必要な費用は下記の通りです。

申立手数料 収入印紙:1500円分
予納金 同時廃止:1〜2万円程度
管財事件:50万円以上(少額管財事件の場合は20万円)
予納郵便(切手) 4000円分(管財事件の場合は、8000円分程度)

(3)審尋

自己破産の申立てをしてから1~2か月後くらいに、裁判所から呼び出しがあります。そこで裁判官から自己破産申立ての事情について質問がなされます。自己破産は借金をゼロにするという大きな効果があるため、自己破産に際して、自己破産に値するのかどうかを裁判所がチェックする必要があるためです。なお、代理人として弁護士がついている場合は、申立て当日などに申立人に代わって弁護士が代理人として審尋を行ってくれる(即日面接)ので、申立人は裁判所に行く必要はありません。

(4)同時廃止

自己破産の手続きでは、破産者の財産を現金化して、それを債権者に配当することになります。そのため、破産者の財産を調査し、管理・処分する破産管財人が選任されることになります。しかし、破産者の財産が少なくて、破産管財人による管理処分手続き(破産手続き)をまかなう費用すらない場合には、破産手続きを進めても意味がありません。そこで、このような場合には、破産管財人を選任せずに、破産手続開始決定と同時に破産手続きを終結(廃止)が決定されます。これを「同時廃止」といいます。

多重債務の方が自己破産をする場合は、財産がまったくないケースがほとんどなので、破産事件の大半は同時廃止となります。同時廃止になれば、破産管財人は選任されませんので、予納金は1~2万円程度に抑えられ、負担の少ない手続きとなります。では、どのような場合に同時廃止になるのでしょうか。裁判所ごとに取り扱いが異なり、一定の基準はありませんが、ひとつの目安として

  1. 自動車や株券、預金、保険の解約返戻金など個別の財産が20万円を超えないこと(※個別の財産が20万円を超えなくても、合計額が高額になる場合は管財事件になる可能性があります。逆に個別の財産が20万円を超える場合であっても、生活や仕事に必要である等の事情があるときは同時廃止になるかのうせいがあります。)
  2. 現金を一定額以上もっていないこと(各裁判所により金額が異なり、東京地裁では33万円、大阪地裁では50万円を超えると管財事件となります。)
  3. 借金の理由がギャンブルや浪費などでないこと
  4. 財産の流れ、財産状況に不明確な点がないこと

などがあげられます。

(5)管財事件

一定額の財産があったり、財産の流れに不自然な点等があり管財人の調査が必要である場合は、裁判所は破産管財人を選任します。破産管財人が選任されると、管財人との面談が行われます。この面談では申立て書類に基づき自己破産に至ったの経緯やその他破産手続きに必要な事項について聞かれ、また必要書類の提出を求められたりします。

破産手続きでは、債権者に対し、破産者が破産に至った経緯や、財産状況、今後の見通しなどの情報を伝える場として「債権者集会」が開催されます。債権者集会は1~3回程度開催され、破産者は出席義務があります。もっとも、債権者集会は配当について議論する場ではないので、出席する債権者は少なく、ほとんどが管財人の報告で終了します。

また管財人は、破産者の財産を徹底的に調査します。調査の結果、配当すべき財産がないことが判明した場合は、そこで破産手続きは廃止されます。これを「異時廃止」といいます(同時廃止とは異なり破産手続きの開始決定と廃止が違うタイミングで行われるため、こう呼ばれています)。配当すべき財産がある場合は、管財人がそれらの財産を現金化して、その現金を債権者へ配当することになります。配当が終われば、破産手続きが終結します。

(6)免責審尋

破産手続きが終了しただけでは、返済義務は免除されません。破産手続きとは別に免責手続きによって、裁判所に免責を認めてもらう必要があります。免責に先立っては、裁判所から呼び出され、審尋が行われます。審尋を行うかどうかは、各裁判所の任意とされていることから、大阪地裁では、同時廃止では免責審尋は行われず、東京地裁では同時廃止であっても審尋を行うなど、取扱が異なります。免責審尋では、免責を申し立てるに至った経緯や、財産の状況、免責不許可事由の有無などについて質問がされます。破産者一人一人を個別に審尋する裁判所もあれば、数名の破産者を集団で審尋する裁判所もあります。集団審尋の場合は、一人30秒程度で終わることもあります。

(7)免責決定・免責不許可決定

裁判所は免責審尋の結果、とくに問題がなければ、免責を許可する決定をくだします。一方、下記のような免責不許可事由があれば、免責を不許可にする決定がなされます。主な免責不許可事由とは

  • 債権者を害する目的で不当に財産を隠したり、処分したりした
  • 破産手続きの開始を遅らせる目的で闇金から金を借りた、クレジットカードで買った商品を安く売った
  • 一部の債権者だけに借金を返済した
  • 借金が浪費やギャンブル、株取引などによる
  • 破産手続開始の申立ての日の1年前の日から破産手続開始決定日までの間に、支払い不能の状態にあることを知りつつ、支払不能ではないと嘘を言って騙してローンなどを組んだ
  • 裁判所で説明を拒否したり、嘘の説明をした
  • 破産管財人の業務を妨害した
  • 免責許可の決定前から7年以内に免責許可決定を受けている

(8)免責許可の確定

裁判所から免責許可の決定がだされると、免責許可を知らせる通知が裁判所から送られてくるとともに、官報にも免責許可の旨が掲載されます。官報に掲載後2週間以内に、債権者から不服申し立てがなされないと、免責許可決定が確定し、借金の返済義務はなくなります。なお、免責が決定しても、下記の債権は免責されないので、支払いをする必要があります。

  • 住民税や市民税、固定資産税などの滞納税
  • 破産者が悪意をもって加えた不法行為に基づく損害賠償金
  • たとえば暴力などで相手を負傷させた場合の損害金など
  • 事業主である場合は、従業員の給料
  • 罰金,科料、追徴金、過料
  • 養育費など

(9)免責不許可の決定

免責不許可になった場合、借金の支払い義務は免除されません。もし、免責不許可決定が出されたら、1週間以内に、高等裁判所へ異議申し立てをすることで、再度、免責の判断をし直してもらえます。これを「即時抗告」といいます。ただし、自己破産ではよほど悪質であると判断されない限り、免責不許可の決定は出されないため、即時抗告によって判断を覆せる可能性は低いといえます。即時抗告によっても免責不許可の毛手が覆らなかった場合や、そもそも即時抗告をせずに不許可決定を受け入れた場合は、任意整理や個人再生という他の債務整理方法に切り替えるという方法もあります。

個人再生や任意整理では借金の理由などは問われないため、ギャンブルや浪費による借金であっても、手続きを進めることができます。もっとも、自己破産以外の債務整理では、減額された金額であるとはいえ、一定金額の返済を継続する必要があります。そのため、収入がない人の場合は、他の債務整理手続きを利用することができません。では、この場合、どうしたらいいのでしょうか。

債権者の中には、自己破産手続きの開始決定を受けて、損金処理をし、以降請求をしてこない貸金業者もいます。ただ、債権者には貸したお金を返してもらう権利があるため、請求がストップしているからといって借金が帳消しになったわけではありません。いつ何時、訴訟を起こされるかわからない不安定な状態にあるといえます。なお、請求がストップしたまま5年(管財人が選任され債権が確定している場合は10年)が経過すれば、借金は時効で消滅します。その場合は、時効援用通知を債権者へ送るようにしましょう。

(10)免責不許可になった場合の問題点

自己破産の手続きの開始決定がでると、申立人は「破産者」として一部の職業に就くことができなくなります。この職業制限は免責決定が確定すれば、解除されます(「復権」といいます)が、免責不許可の場合は、「破産者」の地位が継続するため、最長10年間は一部の職業につくことができなくなることに注意が必要です。

①制限される職業の一例

弁護士、公認会計士、司法書士、税理士、行政書士、公安委員会委員、公正取引委員会委員、宅地建物取引業、証券会社外務員、商品取引所会員、質屋、貸金業者、生命保険募集者、損害保険代理店、警備業者、警備員、建設業者 など

②免責不許可から復権する方法

  • 自己破産開始決定から10年が経過するのを待つ
  • 債務を完済する

少額管財って何?

申立人に一定の財産がある場合は、破産管財人が選任され、破産者の財産は破産管財人により調査・管理・換価処分されることになります。これを「管財事件」といいますが、管財事件は、手続きが煩雑で、かつ予納金も高額となることから、個人の破産者にとっては負担が大きく、使いづらい制度です。そこで、手続きを簡素化し、予納金の低額化を図るため、一部の裁判所で運用されているのが「少額管財手続き」です。

少額管財とは、法律上の制度ではなく、各裁判所が管財事件の予納金を少額に抑える目的で導入された手続きになります。そのため、裁判所によって手続きの呼称が変わったり、あるいは少額管財手続きそのものを運用していない裁判所もありますので注意が必要です。呼称はどうであれ、少額管財手続きの特徴としては、

(1)手続きにかかる期間が短縮されている

管財事件では通常1年程度期間がかかるところ、少額管財手続きでは、おおむね4か月程度で手続きが完了することになります。

(2)予納金が低額となる

管財事件の予納金が50万円以上であるのに対し、少額管財では20万円程度に抑えることができます。なお、少額管財手続きを利用するには、弁護士が自己破産申立ての代理人となっていることが要件とされています。弁護士が申立代理人となることで、申立前にある程度の調査がなされていることが期待できるので、その分破産管財人の負担が軽減されることから、管財人の調査期間や、調査にかかる報酬などを抑えることができるためです。

まとめ

自己破産は申立てをすれば、すぐに免責され、借金がゼロになるわけではありません。裁判所や、破産管財人が、段階を踏んで免責が妥当かどうかをチェックしていくことになります。そのため、様々な書類の提出が必要となったり、また法的な専門知識が必要となったりします。ご自身で手続きを行うには複雑で、書類の不備によって免責許可がおりない危険性もあることから、弁護士に手続きを依頼するのが無難です。なお、一定の財産がある場合などは弁護士に依頼した方が手続き費用を抑えることができますので、この場合は自己破産の手続きは弁護士に依頼するようにしましょう。

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