自己破産して借金を0にする為の手続きや流れ・条件を解説
自己破産とは、裁判所を利用した借金整理の一つで、裁判所が認めれば借金の返済義務が免除されます。ただし、借金を帳消しにするという大きな効果があるため、自己破産が認められるためにはいくつか条件をクリアする必要があります。今回は、自己破産ができるための条件と手続きの流れについて説明します。
目次
自己破産ってなに?
自己破産とは、借金の返済が困難になった場合に、裁判所を通じて支払い義務を免除してもらう制度のことです。
借金を整理する方法(債務整理)には、自己破産の他、債権者(お金を借りている人)との任意の話し合いで借金の減額や支払い猶予の取り決めをする「任意整理」、裁判所を通じて債務を大幅に減額してもらう「個人再生」、裁判所が仲裁役となって債権者と減額や支払い猶予について話し合う「特定調停」の4種類がありますが、自己破産には借金をゼロにするという大きなメリットがあります。
つまり、自己破産とは、債務の支払いをせずに、人生の再スタートができる制度なのです。
自己破産の手続き
借金をゼロにするには、裁判所で「免責」を認めてもらう必要があります。免責とは、借金などの支払い義務を免れること、つまり借金をチャラにすることをいいます。裁判所は、申立人の事情を審査して、免責が相当かどうかを判断することになります。
そのため、自己破産の手続きでは、裁判所が免責の相当性を判断できるように、借金をした理由などを述べた「陳述書」や、収支状況を把握するための給料明細や家計簿、通帳のコピーなどの財産目録などの書類が必要となります。必要書類が準備できたら、住所地を管轄する地方裁判所へ自己破産の申立てを行います。申立て後は、裁判所が書類をチェックし、自己破産の要件を満たしていると判断した場合は、破産開始決定がされます。
財産がない場合は、破産開始決定と同時に破産手続きが終了し、財産がある場合には、裁判所で選任された「管財人」が財産を調査・管理し、その財産を現金に換えて債権者に配当することで破産手続きは終了となります。破産手続き終了後は、免責についての裁判が行われ、免責を許可できない事由(免責不許可事由)に該当しない場合には免責が許可されます。
免責が許可された場合は、一定期間の間に債権者などの利害関係人から不服が申立てられなければ、免責が確定し、支払い義務が免除されることになります。自己破産多くは、申立てから3か月程度で免責が確定します。
自己破産の条件とは
自己破産の手続きは、裁判所が「破産手続開始決定」をして初めて、本格的に進められていくことになります。破産手続開始決定を受けるには、申立人が自己破産の条件を満たしている必要があります。その条件とは、申立人が「支払い不能の状態にあること」、つまり裁判所が申立人は支払い不能だと認める必要があるのです。では、どの程度の状態が支払い不能といえるのでしょうか。
支払い不能状態とはどういうことか?
支払い不能状態とは、法律的には「債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済をすることができない」状態のことをいいます。
つまり支払不能といえるには
- 支払能力がないこと
- 弁済期にある債務を弁済できないこと
- 一般的かつ継続的に弁済することができないこと
という3つの要件を満たす必要があります。
(1)支払能力がないこと
支払能力は、財産、信用、労務による収入を総合的に考慮して判断されます。支払能力がないということは、債務を返済するための財産や信用がなく、また労務による収入も望めない状態のことです。そのため、無職であっても、借金を返済できる財産があれば支払不能状態とは判断されません。その財産を現金化して、借金を返済すればいいからです。
また、生命保険に加入していて、解約すれば借金を返済するに足りる解約返戻金を受け取ることができる場合も、支払不能状態とは判断されません。仮に、財産がなくても、信用力や労務力によって資金を調達できる場合も、支払不能状態には該当しません。
(2)弁済期にある債務を弁済できないこと
支払不能とは、現在の返済状態を判断するためのものなので、支払不能といえるには現在既に債務の返済が遅れていることが必要です。近い将来、支払いができなくなることが確実であっても、現在のところ滞りなく債務の返済をしているときには支払不能状態とは判断されません。
(3)一般的かつ継続的に弁済することができないこと
急な出費がかさなって一時的に返済ができなかったというのではなく、支払いができない状態が継続していることが必要です。
支払い不能かどうかを判断する一つの目安
裁判所は支払不能かどうかを総合的に判断するため、支払不能か否かを判断するための明確な基準はありません。しかし、一応の目安として「債務の総額が、財産状況や収入状況から考えて3~5年で分割返済できない場合」には支払不能と考えられています。
3~5年で分割返済できるかどうかは下記のように計算できます。まず、債務の総額をすべて計算します。次に、手取り収入から家賃や光熱水費、食費など質素な生活に必要な額を差し引きます。ここで算出される額が、月々の返済可能額となります。最後に、債務の総額を3年~5年で返済した場合の月々の返済額を計算します。
「例えば債務の総額が400万円の場合」
- 3年だと400万÷36回=11万1千円
- 5年だと400万÷60回=6万6千円となります。
ここで計算された月々の返済額が、月々の返済可能額を超えている場合は「支払不能」ということになります。
借金の額が100万程度でも自己破産はできる?
例えば、借金の総額が同じ300万円であっても、年収が200万円のAさんと、800万円のBさんとでは、支払能力が違ってきます。仮に月の返済額が20万円であった場合、月収16万程度のAさんには、到底20万円の支払いは不可能です。これに対して、月収66万程度のBさんにとって月20万円は十分返済可能な額です。
このように支払不能かどうかは、借金の総額の大小ではなく、借入金額と本人の収入や財産の関係で判断されます。そのため、病気で働けなくなった、リストラにあったなどの事情で、無職無収入となり、高価な財産もない場合や、わずかな年金だけで生活をしている高齢の方は、借金が100万円であっても支払い不能と判断される可能性が十分あります。
支払不能と判断されると
裁判所が支払不能と判断すると、破産開始決定をだして破産手続きが開始されます。それに伴い、様々な法的な効力が発生することになります。
(1)財産の管理処分権は破産管財人に移る
財産がある場合は、破産手続きの中で、その財産を現金化して債権者に公平に分配していくことになります。そのため破産手続開始決定がでると、財産の管理・処分権は申立人(破産者といいます)から破産管財人に移ります。破産者は自分の財産であっても、自由に処分することができなくなります。
(2)居住移転に裁判所の許可が必要
居住が制限されますので、裁判所の許可がなければ引っ越しはもちろんのこと、2泊以上の旅行や出張などができなくなります。自己破産は、裁判所が借金の支払い義務を免除する(免責許可)ことで、初めて借金をゼロにすることができますが、裁判所に許可なく居住地を離れた場合は、免責が許可されない危険性があります。このように免責が認められない事項のことを免責不許可事由といい、免責不許可事由に該当した場合は、借金をtyらにできない可能性がありますので、注意が必要です。
(3)郵便物は全て破産管財人に転送される
破産管財人は債務を調査するため、破産者宛ての郵便物(宅急便やメール便は除く)を全て管財人宛てに転送されます。居住制限や郵便物の転送は破産管財人の調査や破産手続きを円滑に進めるためのものなので、遅くとも破産手続き終了まで、基本的には「債権者集会」までには解除されます。なお債権者集会とは、債権者に対し、自己破産手続きの情報などを開示し、債権者の意見を反映させ、破産の結果どの程度の金額を配当できるかなどを報告するために開かれる集会のことで、裁判所の指揮の下、債権者や破産管財人、破産者などが出席します。
(4)資格制限
破産手続きが開始されると、一定の職業に就くことができなくなります。よく知られているものとして、保険の外交員、警備員、宅地建物取引主任者、旅行業務取扱管理者、弁護士や司法書士、税理士などがあります。ただし、この職業制限は免責許可が確定すれば解除されます。
(5)官報に公告される
破産手続きが開始したこと、氏名、住所などが「官報」に掲載されます。官報とは、国が国民に対し法律の公布や、国の政策などを知らせるために発行する新聞のようなもので、自己破産や個人再生、帰化した場合などに氏名、住所が掲載されます。
なお、(1)~(3)の制限は、破産管財人が選任された場合の制限で、現金化して債権者に配当できる財産がない場合には、破産管財人は選任されないため、これらの制限は受けません。また、破産管財人が選任されない場合(財産がない場合)は、破産手続開始決定と同時に、破産手続きが廃止されます(同時廃止)。
免責不許可事由とは?
支払い不能状態にあると判断され自己破産の手続きが開始されても、免責不許可事由に該当する場合は、支払い義務は免除されません。自己破産の手続きは、大きく「破産手続き」と「免責手続き」という2つの手続きがあります。破産手続きは、申立人の支払不能状態を認めることで開始され、財産を現金化して債権者に配当することで終了します。現金化すべき財産がない場合は開始と同時に終了します。
これに対し、免責手続きでは、破産手続きでは支払いきれなかった債務について支払い義務を免除するための手続きです。破産手続きでは、申立人が支払不能状態にあることが手続き開始の条件とされましたが、免責手続きでも、債務を免除するためには免責不許可事由に該当していないことが条件とされます。そのため、支払不能と判断されても、免責不許可事由に該当する場合は、債務の支払いは免除されないのです。では免責不許可事由にはどのようなものがあるのでしょうか。
主な免責不許可事由として下記のものがあります。
- 債権者を害する目的で不当に財産を隠したり、処分したりした
- 破産手続きの開始を遅らせる目的で闇金から金を借りた、クレジットカードで買った商品を安く売った
- 一部の債権者だけに借金を返済した
- 借金が浪費やギャンブル、株取引などによる
- 破産手続開始の申立ての日の1年前の日から破産手続開始決定日までの間に、支払い不能の状態にあることを知りつつ、支払不能ではないと嘘を言って騙してローンなどを組んだ
- 裁判所で説明を拒否したり、嘘の説明をした
- 破産管財人の業務を妨害した
- 免責許可の決定前から7年以内に免責許可決定を受けている
免責不許可事由に該当する場合でも免責が許可される場合って?
免責不許可事由に該当するからと言って、必ず免責されないわけではありません。裁判所がいろいろな事情を総合的に考慮して、免責を許可することがあります。これを「裁量免責」と言い、実際は、免責不許可事由に該当する場合であっても、よほどのことがない限り裁量免責される可能性があります。
まとめ
自己破産手続きをするには、支払不能状態にある必要があります。支払い不能状態とは借金の額の大小ではなく、申立人個人の財産状況や生活状況などを総合的に考慮して判断されるため、自分が支払不能状態にあるかどうかを簡単に判断することは難しいとされています。また、支払不能状態にあっても、借金の理由がギャンブルや浪費などであった場合は、借金の支払い義務が免除されない可能性もあります。そのため、自己破産を検討されている方は、債務整理を専門とする弁護士に相談するのが得策です。
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