
消費者金融からの借金は自己破産できる?できる場合とできない場合
自己破産をされる方の多くは多重債務といって2社以上の消費者金融から借り入れをしている方です。消費者金融からの借金は自己破産をすればゼロにすることができますが、借入理由や借入時期などによっては自己破産が認められないこともあります。今回は自己破産が認められないケースを中心に解説します。
免責不許可事由に該当すれば借金の返済義務は免除されない。
生活費、会社の同僚との遊興費、あるいは医療費にあてるためなど様々な理由で複数の消費者金融から借金をしてしまい、返済ができなくなってしまった場合、自己破産をすれば借金を返済する義務が免除されます。
借金の返済を免除されることを「免責」といい、自己破産には裁判所から免責を許可されることで、借金をゼロにできるという大きなメリットがあります。ただ、借金の理由などによっては免責を認めてもらえないことがあります。免責が許可されない事項を「免責不許可事由」といい、主に下記のものがあります。
- 浪費が理由の借金
- 特定の消費者金融にだけ返済をした(偏波弁済)
- 闇金から借金をした
- ローンが残っている商品を換金した
- 裁判所に嘘の申告をした
(1)浪費が理由の借金とは?
浪費とは無駄使いのことで、パチンコや競馬、競輪などのギャンブルやキャバクラ、風俗通いなどがその代表例となります。また、収入に見合わない高額な買い物など、金額や頻度によっては買い物も浪費とみなされます。同様に、外食費や旅行費なども金額や頻度によっては浪費と判断される可能性があります。
さらに、証券会社から資金や株を借りて取引をする信用取引(FX)は、自分が持っている資金以上の取引ができることからギャンブル性が高く、FXで借金が膨れ上がった場合は浪費と判断されます。この他、スマホゲームやソーシャルゲームへの課金も、常識の範囲を超えれば浪費とみなされます。
(2)特定の消費者金融にだけ返済をした(偏波弁済)
お金を借りた人(債権者)の中から、特定の人だけに借金を返済することを「偏波弁済」といい、免責不許可事由に該当します。自己破産では、すべての債権者は、貸したお金(債権)の金額に応じて、申立人の財産から平等・公平に貸したお金の返済を受ける、という「債権者公平の原則」が採用されています。
にもかかわらず、一部の債権者だけに返済を認めてしまうと、その債権者だけが得をしてしまうことになります。これは自己破産が掲げる基本原則である「債権者平等の原則」に反することになるため、自己破産では偏波弁済が認められていません。
①偏波弁済があった場合はどうなる?
偏波弁済があれば、ただちに免責が不許可になるわけではありません。ただし、裁判所は偏波弁済があったかどうかを調査するため破産管財人を選任することになるので、手続き費用が高額になるというデメリットがあります。
自己破産には、大きく、債権者に分配できるような財産がない場合の手続きとして、自己破産手続きの開始決定と同時に手続きが終了する「同時廃止」と、破産管財人の管理下において財産が現金化され、債権者に分配される「管財事件」とがあります。
通常、財産がない場合は同時廃止となりますが、借金の返済ができなくなった状態(支払不能状態)で、一部の債権者だけに返済を続けた場合は、偏波弁済として、破産管財人が選任されることになります。つまり、管財事件として処理されることになるわけです。同時廃止と管財事件とでは、裁判所へ納める予納金が異なり、同時廃止では1万~2万程度に対し、管財事件では最低でも20万円の支払いが必要となることから、偏波弁済をすると自己破産にかかる費用が高額になることに注意が必要です。
なお、破産管財人が選任されると、破産管財人には自己破産前に申立人が行った行為の効力を否認する「否認権」が認められているため、申立人が偏波弁済を行っていた場合には、否認権を行使して、申立人が支払った金銭を、支払いを受けた債権者から回収し、これを全ての債権者に分配していくことになります。
②どんな行為が偏波弁済になる?
偏波弁済にあたる行為としては下記のものがあります。
- 一部の債権者だけに借金を返済する
- 一部の債権者だけに抵当権などの担保を提供する
- ローンなどを一括で返済する
返済は支払不能状態、一般的には弁護士などの専門家に依頼する30日前以降のものが対象となります。では、水光熱費の支払いや家賃、携帯代金の支払いは偏波弁済にあたるのでしょうか。これらの支払いは生活に必要なものなので、偏波弁済にはあたりません。
ただし、滞納している家賃を支払った場合は、偏波弁済と評価されてしまいます。滞納家賃も、他の借金と同様、裁判所が免責を許可すれば、支払う必要がなくなるものですが、滞納したままだと家を追い出される危険性があります。
そのため、滞納家賃の支払いをしてしまう人も少なくありませんが、滞納家賃を支払ってしまうと、偏波弁済として破産管財人が選任されてしまうので、費用が高額になってしまいます。滞納家賃がある場合は、裁判所の免責許可後に支払うか、あるいは自己破産申立後の収入(新得財産といい申立人が自由に使用することができます)で支払うなどの対応が必要です。
③偏波弁済があれば免責は許可されない?
偏波弁済は免責不許可事由に該当しますが、その場合であっても裁判所が裁量で免責を許可(裁量免責)してくれることがほとんどです。ただし、偏波弁済が他の債権者を害する目的で行われたなど特に、悪質だと判断されるものについては免責不許可となります。この場合、借金の返済義務はなくなりません。
(3)闇金から借金をした
支払い不能状態にある場合、生活費を工面するためなどの理由で、闇金からお金を借りてしまう人がいますが、免責不許可事由に該当する危険があります。
免責不許可事由に該当するだけでなく、闇金は貸金業の登録をしておらず、法定利息をはるかに越える高い利息を要求してくる違法業者です。闇金から借り入れたお金は法律上、返済をする義務はありません。そのため、自己破産をしても闇金からの取り立てはストップしません。非常に厳しく執拗に取り立てをしてきますので、絶対に闇金からお金を借りてはいけません。
(4)ローンが残っている商品を換金した
クレジットカードローンなどで商品を購入し、その商品を廉価で換金する行為は免責不許可事由にあたると評価される可能性があります。例えば、クレジットカードで新幹線の切符や商品券を購入し、それを金券ショップに安く売る行為がこれにあたります。
(5)裁判所に嘘の申告をした
自己破産の手続き中に裁判所の調査に協力しなかったり、嘘の説明をしたときは免責不許可事由に該当します。説明を拒否したり、嘘の説明をすることは自己破産の手続きに協力しないことを意味するので、最も悪質な行為として、免責不許可がだされる可能性が高いとされています。
免責許可が下りない割合は、自己破産を申し立てた人のうち、免責許可がおりないのは、わずか2%程度と言われています。免責不許可事由に該当する場合であっても裁判所の判断で免責が許可されることがほとんど(裁量免責)です。なお、免責の許可が下りなかった場合でも、「即時抗告」(高等裁判所に再度、免責の判断をしてもらうためのもの)をしたり、「個人再生」や「任意整理」など他の借金整理を検討することはできます。
個人再生とは自己破産と同様に裁判所を利用した手続きですが、自宅や車などの財産を所持したまま手続きを進めることが可能で、ギャンブルや浪費が原因の借金でも手続きを行うことができます。ただし、個人再生では借金を大幅に減らすことはできますが、自己破産のように借金をゼロにすることはできません。一方、任意整理とは裁判所を利用しない借金整理の方法で、お金を貸した人(債権者)とお金を借りた人(債務者)が話し合いで、将来かかってくる利息をカットしてもらって、月々の返済額を減額してもらう手続きです。
また、消費者金融の中には自己破産を申し立てた時点で既に貸倒処理をしている業者もありますので、免責が認められなくとも、取り立てを再開してこないケースも多いです。この場合は、一定期間(5年もしくは10年)の経過を待って時効を援用すれば、借金の返済義務から逃れることができます。
借入時期
消費者金融からお金を借りて、一度も返済することなく自己破産するような場合は、もともと返済の意思がないものとして詐欺罪に問われる可能性があります。またこのケースでは、一度の支払いも受けていない債権者から異議が出される危険性があります。
自己破産の手続きでは、自己破産の開始が決定されると、裁判所からすべての債権者に対して「自己破産開始決定書」の写しが郵送されます。それを見た債権者が、免責するのはおかしい、と反対意見を提出してくることがあります。ただし、免責するかどうかは、借金の経緯や申立人の事情、および債権者の反対意見なども総合的に考慮して、最終的には裁判所が判断することになります。
返済する意思はあったが、生活がひっ迫し返済することができなかったなどやむを得ない事情があったことを説明すれば、債権者からの反対意見があったとしても裁判所がその裁量によって免責を許可してくれることもあります。もっとも、裁判所が免責を許可しても、債権者は一定の期間であれば免責に異議を申し立てることができます。
この場合も、必ずしも債権者の意義が聞き入れられるわけではありませんが、一度も返済しない行為が悪質と判断されれば、その債務については免責が許可されません。つまり返済を再開する必要がありますので、自己破産をすることが決まっている場合には、新たにお金を借り入れることは差し控えるようにしましょう。
免責不許可になった場合の注意
自己破産は借金をゼロにできる反面、一時的に職業制限を受けます。例えば警備員や保険の外交員、宅地建物取引士などの一定の職業は、免責許可が下りない限り、その職に就くことができません。
そのため、免責が不許可となった場合は、自己破産の開始から10年間が経過しないと、上記の職業制限は解除されないわけです。どうしても職業制限を解除したい場合は、任意整理などの方法で借金を完済する必要があります。
まとめ
消費者金融からの借り入れについては、自己破産をすれば借金をゼロにすることができます。ただ借金の理由がギャンブルなどの浪費だった場合、また一度も返済することなく自己破産を申立てた場合などには、免責不許可事由に該当し、手続きをスムーズに進めにくくなります。
もっとも、このような場合であっても、やむを得ない事情などをしっかり説明すれば裁判所がその裁量で免責を認めてくれる可能性が大いにあります。免責不許可事由に該当するケースでは、必ず自己破産に強い弁護士に依頼するようにしましょう。
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